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ライゼ通信 

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戦車のような家

空楽のメンバーになる前、住宅性能評価機関で仕事をしていました。
当時、性能評価という名前を世間一般の方は、知りません。
「あねは事件」後、国の政策として、性能を数値で表すということが現場に課せられたのです。
義務化ではありませんでした。

でも、地域の設計事務所や工務店には、その評価制度を理解して、設計を意識して、申請書類を作成する事は、かなりの時間と費用のかかること。

マンションや企画住宅のように、プランが決まっているものは、比較的早く作業が進められる制度。
そう言っても、何でも最初は大変。
会社は、性能評価の制度説明や、申請の仕方指導、設計評価、建設評価の検査の仕事をしていました。

以前にも書いたことのある話ですが、

今家を建てる計画で、設計事務所と打ち合わせをしているという男性の方が、平面図と立面図を持参して来られました。
私は、受付窓口として対応しました。

内容は、「自分の家の設計は、等級はいくつなのでしょうか?」

私は
「図面一枚では分かりません。仕様書等の書類が必要です。
簡単に説明すると、この南側のウッドデッキに面した広い窓を小さくすると気密性断熱性の性能は良くなるはずですよね。そこで等級の数字を意識すれば、窓の大きさを変えるということです。」
と、簡単な性能評価の資料を渡し、私のつたない説明をしました。

本来は、私の後ろに建築学者のようなメンバーがいて、詳しく説明するのですが、皆、講習会の講師や検査員として外出中でした。

その時、彼が言った一言。
「僕は性能武装した戦車のような家が欲しい訳ではありません。南側の開口部を広くして、太陽の光をいっぱい浴びて、心地よい風を入れたいだけ」

私も、同感でした。

なので、「建築確認申請を受理されたら家は建ちます。建築家の方と、よく話し合いながら、その想いをカタチにしてもらって下さいね。そして、施工現場をちゃんと監理してもらえれば、あなたの希望した家が建つと思いますよ。等級の数字を意識されなくても」
の言葉で見送りました。

あれから、10年程の月日が流れました。

住宅業界もどんどん進化してきていると思います。
壊さず活かす。建替えを意識せず、長持ちする家。高齢少子化の時代。中古住宅のストックは増える一方。産業廃棄物の環境汚染。などなど国が抱える問題は多い。

性能を上げ、長期に渡り、住み続けてもらう家。中古住宅の流通促進。

今、熊本のあちこちに「長期優良住宅対応」と書いたのぼりや広告を掲げた住宅会社が増えてきました。

戦車のように、性能武装だけの家ではなく、木をふんだんに使って、窓の開口部も広く、外部との繋がりを大切に、そし五感にひびき、
心地良い家。

長期優良住宅が義務化された時、空間設計力+性能+施工力=空楽の家。になるように、今メンバーも動いています。

私は、国土交通省指定住宅評価機関という「固い現場」にいたせいか、柔軟に自由な発想の設計力のある仲間達と、今仕事が出来ていることが楽しく幸せです。

政治家の動向ばかりに目を向けることより、消費者の近くで家を一緒に創る役目。

家創りのはじめのいっぽは大切です。
by iepro | 2014-11-21 08:05 | 想い